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No.53

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名前変換 ※ソーンズ・ウィーディの回想秘録のネタバレをやや含みます。「最近ソーン…

小説

#ソーンズ #夢主 #2023

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早とちり

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※ソーンズ・ウィーディの回想秘録のネタバレをやや含みます。

「最近ソーンズの姿を見てない気がする」

 気づいたのはいつだっただろう。艦内での爆発の話を聞くことが少なくなったからだろうか。それとも、最近は甲板に吊るされている彼を見かけなくなったからだろうか。よく後処理に追われるソーンズに出会っていたし、甲板に吊るされていた日にはなぜかその状態で会話をしていたこともあったのに。
 何にしろ、まともな理由では気づいていないことに乾いた笑いが出る。
 そんな話を同僚にしたら、彼女はそういえば、と前置きをしてこう言った。

「ソーンズなら、イベリアに帰ったって聞いたけど」
「か、帰った?」
「うん。イベリアの裁判所からの協力要請だとかなんとか?」

 それ以上は彼女も詳しく知らないらしい。それにしても、そんな話、全く知らなかった。
 そういえば、最近はイベリア近郊への任務の数が増えている、とはきいた。そのうちイベリアの内部にも調査が可能になるんじゃないか、とも。この前、イベリアの審問官であるアイリーニさんや、ルーメンさんがロドスに加入したという話もある。ルーメンさんはイベリアとロドスを行き来しているらしいし、前までのような鎖国をやめるかもしれない、という噂は本当だったのだろう。

「そっか。帰っちゃったのか……」

 一時的な帰省の可能性だってあるだろう。それなのに、私は何故だかソーンズはロドスに戻ってこないんじゃないか、とどこかで思ってしまっていた。というより、ロドスに帰ってこなくても、ソーンズならありえるんじゃないか、と思ってしまっていた。

 ソーンズとは、長い時間を一緒に過ごしてきたわけではない。彼の起こした爆発を初めとしたトラブルに巻き込まれるのだって、頻繁というわけではなかった。ロドスの中で出会ったら、会話を交わす程度だった。それから、数度、エリジウムたちも交えて飲みに行ったことがある程度。それでも、彼がしていたイベリアの話を、私は覚えている。あまりにも印象的だったから。

 一言くらい何か言ってくれてもよかったのに、とは思ったものの。ソーンズからしてみれば、言うほどの仲でもなかったんだろうな、と思った。







 あれからさらに時間が経った。爆発音も、皆の騒ぐ声も、当然、数が減ったままだ。もちろん、艦内トラブルは少ない方がいいに越したことはないし、本来はそちらが正常なのだろう。
 それなのに、どこか物足りなくて、空っぽになったような気がするのはどうしてだろうか。

 私は溜息を吐く。

 そのまま、ぼうっとした状態で廊下を歩く。そうしていくらか歩いていると、不意に、とんとんと肩を叩かれた。
 いったい誰だろう、と振り返った先。

「{NAME0}。顔が死んでるぞ。どうしたんだ?」

 そう言って、私の目の前に立っていたのはソーンズだった。

「えっ、あれ? ソーンズ? なんで?」

 いなくなったと思っていたソーンズが急に私の前に現れて、思考がストップした。ソーンズはそんな私を見て、「俺がいたらおかしいか」と眉を顰めた。

「だって、イベリアに帰ったって聞いて」
「確かにイベリアには帰ったが。そんな慌てることでもないだろう」
「それで、ロドスをやめたのかと思って……」
「どうしてそこからそう思考が飛ぶんだ?」

 ソーンズは私の言葉を聞いて信じられない、と言わんばかりの表情をしていた。

 実のところ、私がそう思ったのは、単にソーンズの事情だけではなかった。
 ソーンズがイベリアに帰った話を聞いたあと、クロージャからとある話を聞いたのだ。ウィーディの友人が、ライン生命を退職してイベリアへと技術復興のために戻るのだと。おかげで、クロージャはウィーディがロドスを退職するんじゃないかと勘違いしたそうだ。
 そんなこんなで、ソーンズも辞めてしまったんじゃないかという私の思い込みは加速されてしまった。
 その話をソーンズにすると、ソーンズはもはや呆れを通り越したようで、なんとも言えない表情をしていた。

「辞めるなら、さすがに声くらいかけるぞ」
「ほ、ほんと?」

 ついでに、ソーンズからそれくらいの声はかけてもらえる程度の仲だった、という言質ももらって。
 ともかく、今までのことは全て私の勘違いだったということだ。
 私はほっと肩を撫で下ろし、大きく息を吐いた。

「なんだ。俺がいなくなって寂しかったのか?」

 そんな安心した私の様子を見て、ソーンズは先ほどまでとは変わって、軽い調子でそう言った。
 ……寂しい? ソーンズがいなくて? 
 確かにちょっとした喪失感はあったかもしれない。ソーンズがトラブルを起こすこともなく、会話をすることもなくて。今までちょこちょことしてきたソーンズとの会話は、私にとってはそれなりに楽しいものだったから。でも、それがなくなって寂しかった、なんて。あまり認めたくはない。……認めたくない、けれど。

「そうなのかも……?」

 私の中のもやっとした感情は「寂しさ」という言葉に言語化され、幾分か納得させられてしまったらしい。
 私の目の前で、ソーンズが目を瞬かせた。そして、数秒ほど何か考えるような表情をした。

「……そうか。それは意外だったな。これからは、{NAME0}にも都度話すようにする」

 ソーンズにしては妙に塩らしい対応だった。初めて見るソーンズの反応に、私もどうしたんだろう、と数秒考えこむ。
 そうして、私は悟った。多分、ソーンズは私が「寂しいとか、そんなことあるわけない」と否定の言葉を予測していたのだと。私が想定外にストレートな返事をしたから困っているのだ。

「べ、別に今まで通りでいいし、いちいち話しかけにこなくていいから! さっきのは聞かなかったことにして!」

 私は慌ててソーンズの言葉を否定する。今更感は否めないが、ないよりマシだろう、と淡い期待を込めて。ソーンズが冗談として流してくれれば、この話はここで終わりだ。

「まあ、そういうことにしておこう」

 ソーンズはうっすらと笑っていた。
 あまり自分の前でソーンズが笑っているところを見たことがなかった私は、それを珍しく思った。だが、やがて彼がこの状況──私の失言を楽しんでいるらしいことに気づく。

「何も面白くないから!」

 私の声とは裏腹に、ソーンズは楽しそうな様子をどんどんと露わにしているようだった。
 そんなに私をからかって楽しいか。
 私はため息をつく。次からは絶対に失言はしない、と心に誓った。


20230815
#ソーンズ #夢主
#2023




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