更新履歴
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まとま( memo / 更新連絡X / ゲームの日記 )明日方舟CNプレイヤー。…
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まとま( memo / 更新連絡X / ゲームの日記 )
明日方舟CNプレイヤー。グロ版は半ば引退気味。
Hypergryphのことが好き。
ご連絡は更新連絡XにDMいただくか、contact*wandertmt.me(*→@)までメールをお願いいたします。
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do / sikaku / なんかいい感じの漫画ビューア / alevirita / 何らかの配布場
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2025年11月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
学パロ
2025年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
対応の変化
2025年5月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2025年3月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2025年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
落下事件
名前変換
※ソーンズは本名で進みます
※引星ソーンズの新年ボイスの内容を含みます
※ドクターが出ます
その日、ドクターを含めロドスの面々は、イベリアのとある港町で宝宝揺籃号と合流していた。
久しぶりの再会を喜び、宝宝揺籃号の船長は船で宴を開き、ロドス一行も参加を表明した。
そうして、宴が盛り上がり、夜も更けて来た頃。ドクターは風に当たりたいと思い、席を立って甲板に出た。
ドクターが海風に当たっていると、「ドクター」と声をかけられた。ドクターが振り返る。後ろに立っていたのは、ソーンズだった。
「船の手すりには寄りかかるなよ。酔っ払って海に落ちるのはごめんだろ」
「落ちる……? 手すりが壊れているのか?」
「壊れていない」
「ならなぜそんなこと━━」
ドクターは首を傾げた。それから思考を巡らせ、ドクターはひとつの可能性に辿り着いた。じっとソーンズの方を見やると、ソーンズが軽く咳払いをした。
「…………とにかく、俺にはわかるんだ」
「……君ね」
ドクターが苦笑いをしたところで、その会話を聞いていたであろう船員が大きな声で笑いながら、会話に加わった。
「そうなんだよ、ドクターさんよ! あんときゃ大変だったんだよ、なんてったって……」
「おい、余計なことを言うな」
「いやいやあの出来事は誰だって忘れらんねえって! なんせ{NAME0}も一緒に落っこちちまったんだからな!」
豪快に笑う船員に、ドクターはソーンズを二度見した。
「……ソーンズ?」
「…………」
船員に暴露されたソーンズは、諦めたように大きなため息を吐いた。
*
宝宝揺籃号が出航して間もない頃。イシドロの船長就任を祝い、宴が開かれた。
倉庫から次々と酒を持ち出して、もうそれは飲めや騒げやのお祭り騒ぎとなっていた。
イシドロは船員たちと飲み比べを始め、周りは飲み比べをする彼らを煽り始める。どん、と樽のジョッキが机に勢いよく叩きつけられる音がした。
「船長、いい飲みっぷりじゃないか!」
「俺だって負けてねえぜ!」
「もう一杯! ほらもってこい!」
「…………」
{NAME0}はそれを少し離れた位置から眺めていた。
酒に弱い{NAME0}は宴会では絶対に飲まないと決めている。こういう場では一口でも口にしたら永遠に飲まされるのが目に見えているからだ。急性アルコール中毒で死にたくはない。
{NAME0}がその様子をぼーっと見ていると、トントンと肩を誰かに叩かれた。振り返ると、女性の船員たちがジョッキを片手に立っていた。
「{NAME0}さん、男たちは放っておいてこっちで飲みましょう!」
「私、アルコールはダメで……」
「飲まなくてもいいんで! 船長との話が聞きたいです!」
「え」
「ほら、船長が船長になる前の話ですよ、出会いの話とか色々!」
「ええ……?」
女性船員たちの瞳は好奇心でキラキラとしていた。恋バナというものはどこの世界でも人気らしい。
{NAME0}が戸惑っている間に、女性船員たちはどんどんと盛り上がって捲し立てていく。
「だって気になるじゃないですか、船長っていつも{NAME0}さんのこと気にかけてるし」
「こんな日でもないと船長なしで話せませんから!」
「そ、そう……? じゃあ、ちょっとだけ……」
その雰囲気に気押された{NAME0}は、女性船員たちのテーブルに混じることにした。
これからとんでもない質問責めに遭うとも知らずに。それも素面の状態で。
そうして夜もだいぶ更け、船員たちが酔い潰れてきた頃。
{NAME0}は、イシドロがやや覚束ない足取りで甲板に向かって出ていくのに気づいた。
「あ、ちょ、{NAME0}さんどこいくんですかあ」
「イシドロが席外したみたいなので、念のため見てきますね」
「え〜{NAME0}さんもせんちょーのことばっかりだあ」
「いってらっしゃ〜い、楽しんで」
(楽しんで……?)
べろべろになりかけている女性船員たちは思い思いに{NAME0}を煽って送り出していた。引き留めはされなかったことに安堵して、{NAME0}はイシドロが出て行ったのと同じ方向へ向かった。
甲板に出ると、イシドロはすぐに見つかった。手すりに寄りかかりながら、夜の海をぼんやりと見つめている。
「イシドロ」
「……{NAME0}…………?」
{NAME0}はイシドロに声をかけた。側まで来て、{NAME0}はイシドロからアルコールの臭いを感じ取った。
「どれだけ飲んだの……足取りも怪しかったし、本当に大丈夫なの?」
「……ああ……ここには涼みにきただけだ…………」
イシドロは少しばかり辿々しい口調でそう言った。
{NAME0}はそれを聞いて、イシドロはかなり酔っていると確信した。今までロドスで何度も酔い潰れたソーンズを運び込まれ、介抱してきたからわかる。
「お水もらってくるよ」
「いや、いい……行くな……」
イシドロは{NAME0}の服の袖を掴んで引き留めた。力のこもっていない口調とは違い、{NAME0}を引き留める力は強かった。
「そばにいてくれ……」
(……今日はなんだか甘えたがりだなあ)
{NAME0}はイシドロに言われるままに、ぴったりと寄り添った。酒臭さをより強く感じるようになったが、{NAME0}は黙ってイシドロの隣に立っていた。
イシドロは{NAME0}の手をとり、指を絡ませるようにして繋いだ。
「……ねえ、イシドロ」
「……なんだ?」
「私、嬉しいんだよ」
「……何がだ?」
「いつも、イシドロのの見ているものがわからなかった。イシドロの性分は理解しているつもりだったけど、イベリアに行くって連絡を受けるたびに、何を考えているんだろうと思ってた」
「…………」
「だから、今こうやって、イシドロが見ている世界を一緒に見られて嬉しい。私、イシドロが心からやりたいと思っていることに、最後まで関わりたい。一緒にいたい」
{NAME0}の髪が、服が、海風を受けてふわりと流れる。
昔はロドスのジャケットを身につけていた{NAME0}は、今ではそのジャケットを脱ぎ、この船に合わせた服装をしている。そこにロドスの痕跡は全くない。彼女はもうロドスの{NAME0}ではない。宝宝揺籃号の、船長の大切な人であり、錬金術師の助手であり、乗組員の{NAME0}だ。
「{NAME0}……」
海風に揺られている{NAME0}を、イシドロは心の底から綺麗だと思った。愛おしさを感じて、イシドロは{NAME0}の髪に手を伸ばそうと、手すりにかけた手を動かした。
そのときだった。
「あ」
「えっ?」
一瞬だった。イシドロがよろけてバランスを崩した。手すりの向こう側へと倒れる。
イシドロと{NAME0}は手を繋いだままだった。イシドロに釣られて{NAME0}の腕も引っ張られる。{NAME0}はイシドロと同じようにバランスを崩して倒れ込み、そのまま手すりを越えた。
「え、嘘、」
手すりの向こうにあるのは海だけだ。つまりは、海に飛び込むことになるわけだ。
「いやあああ━━!!」
{NAME0}は叫び声を上げることしかできなかった。
その一方で、イシドロは、{NAME0}の背中と腰に手を回し、力強く抱きしめた。勢いよく着水しても、決して離さないように。それから、{NAME0}が直接着水してしまわないように、向きをできる範囲で整えた。
数秒後、ばしゃんと勢いのよい水色が響いた。
「大変だ! 船長が海に落っこちた!」
「{NAME0}も一緒に落っこちた!」
「なんだって?!」
「とにかく早く探すんだ!」
「真っ暗で何も見えねえよ!」
イシドロは深く潜り込んだ海から、水面を目指して上昇する。
腕の中の{NAME0}はぐったりとしている。おそらく落下と着水のショックで気を失ったようだ。気を失っているため、もがいたり暴れられたりすることはないが、海水を飲み込んでいる可能性が高い。早く水面に戻らなければ。
「ここだ!」
イシドロは水面に上がり顔を出した。{NAME0}の顔が水面につかないよう、抱き上げる。
船員たちの慌てた声が聞こえる。夜の海は暗く、イシドロたちを探すのに手間取っているようだった。イシドロは心相原質を使って糸をひき、船の上の船員たちに場所を示す。
船員たちは心相原質の糸を頼りに、ロープを投げ込んだ。そのおかげで、イシドロと{NAME0}はすぐに引き上げてもらうことができた。
「{NAME0}、……{NAME0}! 聞こえるか?!」
イシドロは{NAME0}を寝かせると、必死に呼びかけ、肩を叩いた。
「……ん…………イシ……ドロ……?」
やがて、弱々しい声と共に、{NAME0}の瞼がゆっくりと開かれた。
そして、ごほごほと大きく咳き込み始めた。おそらく、海水を飲み込んだ影響だろう。
「{NAME0}、大丈夫か? 身体に痛むところは?」
「……ない、と思う」
{NAME0}はゆっくりと起きあがろうとしていた。イシドロはすぐに{NAME0}の背中を支えて、手助けをしてやる。
「喉が痛い……しょっぱい……」
「水を持ってくる」
「……イシドロ、行かないで」
立ちあがろうとしたイシドロを、{NAME0}が掴んで引き留めた。代わりに、イシドロは周りの船員に水を持ってくるように指示をした。
「{NAME0}、無事でよかった」
イシドロは息を吐き、{NAME0}を引き寄せて抱きしめた。
「巻き込んで悪かった。次から気をつける」
「本当にね。まさかこんな簡単に落っこちるなんて思ってなかった……」
{NAME0}はイシドロの体温を感じながら、先ほどの落下の感覚を思い出して身震いした。
そして。
「……っくしゅん!」
とても、それはとても大きなくしゃみをした。
*
「海に落っこちた話? も〜本当に大変だったんだから!」
ドクターはソーンズたちと別れたあと、船内で{NAME0}とすれ違った。先ほど海に落ちた話をしたことを伝えると、{NAME0}は目を見開いてから、呆れたように笑った。
「あの後、風邪をひいちゃったんだ。しかも拗らせて1週間近く寝込んじゃってね。イシ━━ソーンズに身の回りのこと全部してもらったし、看病もしてもらったんだ!」
「そ、それは大変だったね……?」
「まあ、元はといえばあれだけ酔っ払ってたソーンズのせいだし。でも、さすがに反省したんじゃないかな?」
{NAME0}の言葉を聞きながら、ドクターは先ほどのソーンズとの会話を思い出す。
『{NAME0}が風邪をひいてしまってな。約1週間、{NAME0}につきっきりになった。錬金術の実験に遅れが出たのは惜しいが……{NAME0}の世話ばかりしていても咎められなかったから、悪くない1週間だった』
ソーンズがそう言っていたことは、{NAME0}には言わないでおこうと思ったドクターだった。
#引星ソーンズ #夢主 #ドクター
#2025
2024年12月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
君の心はすぐそばに
名前変換
※2024年12月イベント「出苍白海」の内容を含みます
※引星ソーンズのプロファイルの内容を含みます
※ソーンズは全て本名で話が進みます
それは、航海に出る少し前のこと。
こんこん、と船長室の扉をノックする。
「イシドロ、私だよ」
「入ってくれ」
返事を受けて、私は船長室の扉を開ける。私の顔を見て、ソーンズが表情を和らげたのが見えた。ソーンズが近くまで来るようにと手招きをした。
「{NAME0}に渡したいものがあってな」
「渡したいもの?」
ソーンズは机の上に置かれていた小箱の蓋を開き、指輪を取り出した。
「指輪?」
「ほら、右手を出して」
ソーンズに促されるままに右手を差し出せば、ソーンズは薬指にその指輪をゆっくりとはめていった。
「よし。大きさは問題ないな」
ソーンズはひとりで頷いている。
私は自分の指にはめられた指輪をまじまじと見つめた。それは、白く鈍い輝きを放っている。それはまるで、今の彼の右腕のよう──
「ねえ、イシドロ」
「なんだ?」
「これ、もしかして、心相原質を使って……?」
「そうだ」
イシドロは私の問いに頷いた。
心相原質。イシドロが使っている、白色の流体。
錬金術によって生み出された物質であり、それを扱えるのも錬金術師だけだ。いま、イシドロの右腕は、心相原質を使って補われている。
どうやって動いているだとか、詳しい構造は私はわからない。だけれども。
「私の記憶が正しければ、これって万物の動きを感知できるんじゃなかったっけ?」
「……おおよそその理解で問題ない」
「私の行動を知りたいの?」
「監視したいわけじゃない。だが、もし{NAME0}に何があっても、これがあれば感じ取れる。お前を守るためにも、必要だと考えた」
「わかった。イシドロが必要だと思うなら、肌身離さずつけておくよ。……それに」
「それに?」
私は指輪を左手でそっと撫でた。
「やっぱり大切な人から指輪を贈ってもらえるのは嬉しいから。大切にするね」
「……{NAME0}」
イシドロの右手が私の頬を撫でた。今の彼の右腕は、心相原質に覆われており、ひんやりとした感触がする。それでも、彼の一部であることには変わりない。私は彼の右手に頬ずりをした。
ロドスにいた頃も、航海に出た今も変わらない。イシドロが私を愛してくれている。それだけで私は嬉しくて仕方ないのだ。
*
あれから、少し経った。
私は船の備品の確認作業をしていた。船が寄港して物資を補充できるタイミングは限られている。その際に必要な数を確定させるため、また無駄に買いすぎないようにするために、毎回リストを作っている。
ちょうどそのリストを担当の船員に渡して作業を終えた頃、私はとある異変に気づいた。
ピクピクと、右手の薬指が動いている。指が痙攣しているのとはまた違う、かくかくとした動きだ。
「何これ……?」
しばらくそれを眺めていると、開いていた右手の中で、薬指だけがくっと下に曲げられた。イシドロにもらった指輪がはめられた指だ。
指輪にそっと触れると、どうやら指輪が私の薬指を動かしているらしい。
「下?」
私が呟くと、今度は指が右側に突っ張る感覚がした。
「右に行って、下?」
指輪の導きのままに廊下を進んでいくと、階段が現れた。そこで突っ張った感覚はなくなり、指が下を指した。階段を降りていく。
私はまだこの船の構造には詳しくなく、行ったことのないところも多い。それなのに、指は迷うことなく道案内をしている。私は指の感覚に従って歩いていく。
自分が今どこにいるのかわからないが、船のかなり深部まできたような気がする。
廊下を道なりに進んでいくと、とある扉の前で、指の動きが止まった。
「…………?」
この部屋、ということだろうか?
私が部屋の扉をノックしようとしたとき、扉の向こうから声が聞こえた。
「{NAME0}、扉を開けてくれないか?」
それは、誰よりも聞き慣れたイシドロの声だった。
私が急いで扉を開けると、イシドロは「部屋に入らないように」と言って、私に扉を押さえさせた。
「この部屋はどうやら尋問室か何かだったようでな。内側から扉が開かない仕様になっているんだ」
「え、じゃあ」
「そうだ。それを知らなかったから、しばらく閉じ込められていた。修繕用の材料の備蓄を考えれば、扉を壊すわけにもいかない」
イシドロは部屋から出て、扉を閉めた。
「俺はこんな仕様の部屋を使うことはないだろうし、今度、扉の仕様を変更しよう」
「そうだね、知らずに閉じ込められちゃったら大変だもんね……」
「{NAME0}、扉を開けてくれて助かった」
「それなんだけど。……この指輪、なんなの?」
私はこの指輪に導かれてここまでやってきた。イシドロはこの指輪──というか心相原質は、万物の動向を感じるものだと言っていたけれど、どういうことなのか。
私の問いに、イシドロは私の右手をとって、こう答えた。
「心相原質は俺の意思で動かすことができる。お前が仕事を終えたのがわかったから、心相原質を操ってお前をここまで来させた」
「…………」
そういえば、イシドロが戦闘時に心相原質を動かしているのを見たことがあった。だから、心相原質を使って作られているこの指輪も同じように動かせるというのも、言われてみればそうだ。
そうなんだけれども──。
「……呼び出しに使うんだ」
「そんな顔をするな。今回はそうせざるを得なかっただけだ」
「別に気にしてないよ。私は心相原質に詳しくないから、ちょっと驚いただけ」
こうやってイシドロに呼び出されるのは悪くない。それどころか、離れていても彼の意思を感じることができるなんて、本当に、なんて便利な物質なんだろう。
なんて言ったらイシドロがひきそうだと思ったので、心の中で止めておいた。
*
──さらに数日後。
私が船長室の掃除をしていると、また薬指がくくっと勝手に動き始めた。
「また? イシドロったら一体何をやったんだか……」
私は軽くため息をついた。
前回のように閉じ込められていても困るし、イシドロを探しに行った方が良さそうだ。
私は船長室を出ると、前と同じように、薬指の導きを確認する。とりあえず、廊下を右に。階段を下に。その先に見えるのは──錬金術の工房だ。
私は工房の扉を叩いた。
「イシドロ、私だけど」
「{NAME0}? 今は作業中だ、用があるなら後にしてくれ」
扉の向こうからの返事を聞いて、私は首を傾げた。
「何言ってるの? 私に用があるのはイシドロの方じゃないの?」
ガチャガチャと何かをいじっていた音が、ぴたりとやんだ。工房の扉が開き、イシドロが顔を出した。
「誰かにここに来るように言われたのか? 俺は{NAME0}を呼んだ覚えはないが」
イシドロの物言いから察するに、本当に私に用はないらしい。
私は指輪に呼ばれてやってきたと思ってきたけれど、私の勘違いだったのかもしれない。
「前みたいに指輪が反応したからまた何かやったんだと思って来たんだけど……何もないなら戻るね。邪魔してごめん」
何もないならそれはそれでよかった、と思いつつ、扉を閉めようと思って扉に手をかける。
そのとき、イシドロが私の右手を掴んだ。
「……その話、詳しく聞かせてくれないか」
「詳しくも何も、前にイシドロが閉じ込められちゃったときみたいに、指輪が急に反応したんだよ。指がこっちって示すから、そのとおりに来ただけ」
「そう、か」
イシドロは私の話と聞いた後、何やら神妙な顔をして、「いや、まさかな」なんて呟いている。
「……どうしたの?」
私が尋ねると、イシドロは一瞬躊躇いを見せたあと、「俺の推測ではあるが」と前置きをした上で語り出した。
「俺はまだ心相原質をコントロールしきれていないようでな」
「うん」
「俺の心の状態によって、心相原質が意図せず動くことがあるんだ」
「……うん?」
そこまで言って、イシドロは私から目を逸らした。
「……実は、俺は先ほどまで、今やっている作業が終わったら{NAME0}に会いに行こうと思っていた」
「…………」
「…………」
「……つまり、私に会いたいって思ってたら、心相原質が勝手に反応して動き出しちゃったってこと?」
「……おそらくは、そうだ」
心相原質。なんて便利で、かつ、厄介な物質なんだ。
「もう少しだけ待っていてくれないか。すぐに作業を終わらせるから、一緒にいつもの場所へ行こう」
イシドロは私の髪を撫でながらそう言った。私もそれに頷く。イシドロは軽く微笑むと、私の額にキスを落としてから、工房に戻っていった。
私への会いたさ故に無意識に心相原質を動かしてしまうなんて、なんて愛おしいんだろう。
イシドロにとって、この指輪は私の存在をすぐそばに感じるための装置だ。心相原質を通じて、私の動きは彼に伝えられている。
一方で、私にとっても、比喩ではなく彼の心を感じることができる大切なものなのだ。
私は薬指にはめられた指輪に、キスをした。
そう思ったのも束の間。
後日、イシドロが心相原質を使って修理したトイレの扉が、バタンバタンと荒波のように勢いよく開閉を繰り返し、人を強打し挟み殺す凶器になっているのを見て、心相原質への自分の認識を改めた。
20241208
#引星ソーンズ #夢主 #2024
2024年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2024年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2024年5月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
ハンドクリーム塗ってもらう話
名前変換
※世界観設定資料集の内容を含みます
ことの発端は、私がハンドクリームを出したことだった。手を洗ったあと、いつものようにハンドクリームを取り出して、塗ろうとした。それだけだった。私がハンドクリームを取り出したのを見ていたソーンズが、何を思ったのか「俺に塗らせてもらえないか」と言ってきたのだ。そう言われて特に断る理由もなかったので、ありがとう、とハンドクリームを差し出した。
ソーンズがそっと私の手を取った。今まで何度もソーンズと手を繋いできたはずなのに、こうして改めて真正面から手を触れられるとついドキドキしてしまう。
ソーンズはそんな私の様子を気に留めることもなく、チューブからハンドクリームを私の手の甲に出していく。
私の手の甲にハンドクリームを広げたあと、指の付け根から指先へと伸ばし始めた。一本一本丁寧に、同じ動作を繰り返していく。時折きゅっと指先や指の間に力を込められる。痛くもなく、弱くもなく、ちょうどいい力加減だ。マッサージをしてくれているのだろうか。
今まで、普通に繋いだことはあっても、こんなふうに手を擦られたり、指先を握られたりすることなんてなかった。今自分の手の上で起きている感覚はどれも初めての感覚で、心地いいような一方、照れくさくて恥ずかしい気持ちが私の中で混じり合っている。
その上、ソーンズがあまりにも丁寧に、優しく私の手を扱ってくれるものだから、驚きと嬉しさで私の頭はぐちゃぐちゃになりそうだった。
なんとか気持ちを落ち着けて、目の前の手を凝視した。すっと深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。
それにしても、どうして急にあんなことを言い出したんだろう。そう思って、手元にむけていた視線をちらと上に移して、ソーンズの様子を伺った。
私の手の甲を見つめるソーンズの表情は、今までに見たことがないくらいに優しい表情だった。そして、心なしか嬉しそうに見えた。
「丁寧に塗ってくれるんだね」
「当然だ」
いつもみたいに、ちょっと呆れたような言い草だった。でも、その声色はいつもよりも数段優しい。
「エーギルにとっては、こうしたケアは絶対に欠かせないことだからな」
ソーンズの言う通りだった。エーギルは乾燥に弱い種族なのだ。気管支の調子は湿度に左右されるし、肌は乾燥しやすく、傷つきやすい。時に、乾燥が命に関わることさえある。
海から陸地へやってきた、その経歴ゆえなのだろうか。はじめてエーギルが陸地に上がって長い年月が経っているにも関わらず、エーギル人は今も乾燥への対策を余儀なくされている。
「だから、こうしてケアを任せてもらえて嬉しく思う」
「そ、そう……? 大袈裟じゃない?」
対策といえども、一般的にエーギル人が行っているのは、こうやって保湿用のクリームを塗って、乾燥を少しでも抑えることだ。今やほとんどのエーギル人にとって、ハンドクリームやボディクリームの使用は習慣となっているだろう。目の前にいる彼も含めて。
「俺にとっては、大袈裟なことじゃない。……それに」
全ての指にハンドクリームを塗り終えたソーンズは、私の両手を、彼の両手で包み込んだ。包み込まれた手から、ソーンズの温かさがじんわりと広がっていく。
「こうして、{NAME0}に長く触れていられるだろう?」
ソーンズがふっと微笑んだ。
その表情に、心臓がひときわ大きく跳ねた。
普段は顰めっ面が多いくせに時折こういうことをするから、彼には敵わないと思ってしまう。
ソーンズはしばらく私の手を包んだままでいたが、やがて私の手を解放した。
「ほら、これで終わりだ」
ソーンズの手が離れていく。温かさが失われていくのが名残惜しくて、思わずソーンズの片手を掴んでしまった。
「どうした、{NAME0}?」
「もうちょっとだけ、繋いでいたい……」
私の言葉に対して、ソーンズは何も言わずに私の左手を取ると、彼の右手の指を私の指に絡めてくれた。再びもたらされた彼の温かさに、安心感を覚える。
「ね、次のときは私がソーンズに塗ってもいい?」
「ああ。そのときは頼む」
視線を手から外し、顔をもう一度あげれば、またソーンズが笑っていた。そうして、彼の微笑みを見るたびに、この人のことがどうしようもなく好きだと、心の底から思うのだった。
20240501
#ソーンズ #夢主
#2024
2024年4月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2024年3月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
2024年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
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