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No.64
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名前変換
※2024年12月イベント「出苍白海」の内容を含みます
※引星ソーンズのプロファイルの内容を含みます
※ソーンズは全て本名で話が進みます
それは、航海に出る少し前のこと。
こんこん、と船長室の扉をノックする。
「イシドロ、私だよ」
「入ってくれ」
返事を受けて、私は船長室の扉を開ける。私の顔を見て、ソーンズが表情を和らげたのが見えた。ソーンズが近くまで来るようにと手招きをした。
「{NAME0}に渡したいものがあってな」
「渡したいもの?」
ソーンズは机の上に置かれていた小箱の蓋を開き、指輪を取り出した。
「指輪?」
「ほら、右手を出して」
ソーンズに促されるままに右手を差し出せば、ソーンズは薬指にその指輪をゆっくりとはめていった。
「よし。大きさは問題ないな」
ソーンズはひとりで頷いている。
私は自分の指にはめられた指輪をまじまじと見つめた。それは、白く鈍い輝きを放っている。それはまるで、今の彼の右腕のよう──
「ねえ、イシドロ」
「なんだ?」
「これ、もしかして、心相原質を使って……?」
「そうだ」
イシドロは私の問いに頷いた。
心相原質。イシドロが使っている、白色の流体。
錬金術によって生み出された物質であり、それを扱えるのも錬金術師だけだ。いま、イシドロの右腕は、心相原質を使って補われている。
どうやって動いているだとか、詳しい構造は私はわからない。だけれども。
「私の記憶が正しければ、これって万物の動きを感知できるんじゃなかったっけ?」
「……おおよそその理解で問題ない」
「私の行動を知りたいの?」
「監視したいわけじゃない。だが、もし{NAME0}に何があっても、これがあれば感じ取れる。お前を守るためにも、必要だと考えた」
「わかった。イシドロが必要だと思うなら、肌身離さずつけておくよ。……それに」
「それに?」
私は指輪を左手でそっと撫でた。
「やっぱり大切な人から指輪を贈ってもらえるのは嬉しいから。大切にするね」
「……{NAME0}」
イシドロの右手が私の頬を撫でた。今の彼の右腕は、心相原質に覆われており、ひんやりとした感触がする。それでも、彼の一部であることには変わりない。私は彼の右手に頬ずりをした。
ロドスにいた頃も、航海に出た今も変わらない。イシドロが私を愛してくれている。それだけで私は嬉しくて仕方ないのだ。
*
あれから、少し経った。
私は船の備品の確認作業をしていた。船が寄港して物資を補充できるタイミングは限られている。その際に必要な数を確定させるため、また無駄に買いすぎないようにするために、毎回リストを作っている。
ちょうどそのリストを担当の船員に渡して作業を終えた頃、私はとある異変に気づいた。
ピクピクと、右手の薬指が動いている。指が痙攣しているのとはまた違う、かくかくとした動きだ。
「何これ……?」
しばらくそれを眺めていると、開いていた右手の中で、薬指だけがくっと下に曲げられた。イシドロにもらった指輪がはめられた指だ。
指輪にそっと触れると、どうやら指輪が私の薬指を動かしているらしい。
「下?」
私が呟くと、今度は指が右側に突っ張る感覚がした。
「右に行って、下?」
指輪の導きのままに廊下を進んでいくと、階段が現れた。そこで突っ張った感覚はなくなり、指が下を指した。階段を降りていく。
私はまだこの船の構造には詳しくなく、行ったことのないところも多い。それなのに、指は迷うことなく道案内をしている。私は指の感覚に従って歩いていく。
自分が今どこにいるのかわからないが、船のかなり深部まできたような気がする。
廊下を道なりに進んでいくと、とある扉の前で、指の動きが止まった。
「…………?」
この部屋、ということだろうか?
私が部屋の扉をノックしようとしたとき、扉の向こうから声が聞こえた。
「{NAME0}、扉を開けてくれないか?」
それは、誰よりも聞き慣れたイシドロの声だった。
私が急いで扉を開けると、イシドロは「部屋に入らないように」と言って、私に扉を押さえさせた。
「この部屋はどうやら尋問室か何かだったようでな。内側から扉が開かない仕様になっているんだ」
「え、じゃあ」
「そうだ。それを知らなかったから、しばらく閉じ込められていた。修繕用の材料の備蓄を考えれば、扉を壊すわけにもいかない」
イシドロは部屋から出て、扉を閉めた。
「俺はこんな仕様の部屋を使うことはないだろうし、今度、扉の仕様を変更しよう」
「そうだね、知らずに閉じ込められちゃったら大変だもんね……」
「{NAME0}、扉を開けてくれて助かった」
「それなんだけど。……この指輪、なんなの?」
私はこの指輪に導かれてここまでやってきた。イシドロはこの指輪──というか心相原質は、万物の動向を感じるものだと言っていたけれど、どういうことなのか。
私の問いに、イシドロは私の右手をとって、こう答えた。
「心相原質は俺の意思で動かすことができる。お前が仕事を終えたのがわかったから、心相原質を操ってお前をここまで来させた」
「…………」
そういえば、イシドロが戦闘時に心相原質を動かしているのを見たことがあった。だから、心相原質を使って作られているこの指輪も同じように動かせるというのも、言われてみればそうだ。
そうなんだけれども──。
「……呼び出しに使うんだ」
「そんな顔をするな。今回はそうせざるを得なかっただけだ」
「別に気にしてないよ。私は心相原質に詳しくないから、ちょっと驚いただけ」
こうやってイシドロに呼び出されるのは悪くない。それどころか、離れていても彼の意思を感じることができるなんて、本当に、なんて便利な物質なんだろう。
なんて言ったらイシドロがひきそうだと思ったので、心の中で止めておいた。
*
──さらに数日後。
私が船長室の掃除をしていると、また薬指がくくっと勝手に動き始めた。
「また? イシドロったら一体何をやったんだか……」
私は軽くため息をついた。
前回のように閉じ込められていても困るし、イシドロを探しに行った方が良さそうだ。
私は船長室を出ると、前と同じように、薬指の導きを確認する。とりあえず、廊下を右に。階段を下に。その先に見えるのは──錬金術の工房だ。
私は工房の扉を叩いた。
「イシドロ、私だけど」
「{NAME0}? 今は作業中だ、用があるなら後にしてくれ」
扉の向こうからの返事を聞いて、私は首を傾げた。
「何言ってるの? 私に用があるのはイシドロの方じゃないの?」
ガチャガチャと何かをいじっていた音が、ぴたりとやんだ。工房の扉が開き、イシドロが顔を出した。
「誰かにここに来るように言われたのか? 俺は{NAME0}を呼んだ覚えはないが」
イシドロの物言いから察するに、本当に私に用はないらしい。
私は指輪に呼ばれてやってきたと思ってきたけれど、私の勘違いだったのかもしれない。
「前みたいに指輪が反応したからまた何かやったんだと思って来たんだけど……何もないなら戻るね。邪魔してごめん」
何もないならそれはそれでよかった、と思いつつ、扉を閉めようと思って扉に手をかける。
そのとき、イシドロが私の右手を掴んだ。
「……その話、詳しく聞かせてくれないか」
「詳しくも何も、前にイシドロが閉じ込められちゃったときみたいに、指輪が急に反応したんだよ。指がこっちって示すから、そのとおりに来ただけ」
「そう、か」
イシドロは私の話と聞いた後、何やら神妙な顔をして、「いや、まさかな」なんて呟いている。
「……どうしたの?」
私が尋ねると、イシドロは一瞬躊躇いを見せたあと、「俺の推測ではあるが」と前置きをした上で語り出した。
「俺はまだ心相原質をコントロールしきれていないようでな」
「うん」
「俺の心の状態によって、心相原質が意図せず動くことがあるんだ」
「……うん?」
そこまで言って、イシドロは私から目を逸らした。
「……実は、俺は先ほどまで、今やっている作業が終わったら{NAME0}に会いに行こうと思っていた」
「…………」
「…………」
「……つまり、私に会いたいって思ってたら、心相原質が勝手に反応して動き出しちゃったってこと?」
「……おそらくは、そうだ」
心相原質。なんて便利で、かつ、厄介な物質なんだ。
「もう少しだけ待っていてくれないか。すぐに作業を終わらせるから、一緒にいつもの場所へ行こう」
イシドロは私の髪を撫でながらそう言った。私もそれに頷く。イシドロは軽く微笑むと、私の額にキスを落としてから、工房に戻っていった。
私への会いたさ故に無意識に心相原質を動かしてしまうなんて、なんて愛おしいんだろう。
イシドロにとって、この指輪は私の存在をすぐそばに感じるための装置だ。心相原質を通じて、私の動きは彼に伝えられている。
一方で、私にとっても、比喩ではなく彼の心を感じることができる大切なものなのだ。
私は薬指にはめられた指輪に、キスをした。
そう思ったのも束の間。
後日、イシドロが心相原質を使って修理したトイレの扉が、バタンバタンと荒波のように勢いよく開閉を繰り返し、人を強打し挟み殺す凶器になっているのを見て、心相原質への自分の認識を改めた。
20241208
#引星ソーンズ #夢主 #2024